COLUMN

コラム

公認会計士の方へ | 時短勤務でもできる、常勤監査役という働き方

〔ママテラス〕で時短勤務希望者を採用しているスタートアップには、近い将来に上場を目指す企業が多く登録されています。そのような企業様から、常勤監査役の採用についての相談を頂くことがあります。

常勤監査役は、公認会計士等の会計や内部統制に関する高度な専門性を持つ方にとって、IPOにおいて重要な役割を担いながらも、柔軟な働き方を実現できる魅力的なポジションです。

本コラムでは、IPO前のスタートアップに常勤監査役として参画することを検討される方に向けて、IPO前に求められる特有の役割や、働く魅力と難しさについて、常勤監査役の方のリアルなお話を交えてご紹介します。

【今回お話をうかがったスタートアップ常勤監査役】

Aさん(40代)
公認会計士・税理士。監査法人にて法定監査等に従事。その後、独立して複数の事業会社の管理業務を受託し、管理部門の構築支援、経理指導、月次・年次決算業務、社会保険業務、税務業務等に従事。家庭とのバランスを保ちながら、事業会社に深く関与する働き方を希望してママテラスに登録し、スタートアップに常勤監査役として参画。

Bさん(30代)
公認会計士。監査法人にて10年程度勤務の後、マザーズ上場会社に取締役監査等委員として勤務。ゆくゆくはIPO準備企業で貢献することを希望し、まずは情報収集を目的としてママテラスに登録し、約1年後にスタートアップ企業へ常勤監査役として参画。

Cさん(40代)
公認会計士。監査法人に10数年勤務。上場直前期のスタートアップに参画し、マザーズ上場を果たす。

時短勤務希望公認会計士のセカンドキャリアとして注目される常勤監査役

常勤監査役にはどのような経験を持つ方が求められるのでしょうか。
一般的には公認会計士やUSCPA保持者、CFO・経理責任者経験者等、会社全体の会計業務に精通している方、あるいは内部管理体制の構築経験がある方が求められています。ママテラスを通して常勤監査役としてスタートアップに参画を決められた方の多くは、監査法人や会計事務所で活躍されてきた公認会計士の方々です。

常勤監査役はフルタイム出勤が必須とは限らないため、子育て等との両立を希望する方に検討しやすいポジションと言えます。加えて、昨今は女性役員比率を含む女性活躍度が企業の業績に長期的には影響があると考える機関投資家等の影響もあり、女性の登録者が多いママテラスによくご相談を頂くポジションの一つでもあります。

IPO準備企業の状況

監査役は一般的に業務監査と会計監査(いわゆる法定監査)を担います。
しかし、これからIPOを目指す企業では、まだ重要書類(規程、規約、議事録等)が定められていなかったり、あっても管理するルールや報告系統が定まっていなかったり。また、内部通報の制度がなく、株主総会の開催経験もない…とないない尽くしの状態がよくあります。

そのため、いきなり法定監査をきれいに回せる状態であるとは限らず、まずは法定監査を漏れなく行える状態を作り、上場基準を満たすレベルの内部管理体制を整える支援を行うということになります。

監査役の役割 ①:正しい経理管理に導くコーチ

スタートアップの経営者には世に出して広めたいサービスやプロダクトがあります。しかし、いかに天才的なエンジニアや営業の神様であっても、経営管理に精通しているとは限りません。

経営者の想いを汲み、それを企業として実現できるように、更には必要であればIPOを実現するために、独立した立場で、経営管理の視点から専門的に助言、支援するという役割が監査役には大きく期待されています。

監査役の役割 ②:内部統制の浸透と定着

スタートアップ企業は事業が拡大しビジネスモデルを確立し始めるシリーズB,Cの段階になってくると、更なる拡大のためにIPOを視野に入れ始めます。

図:スタートアップの企業フェーズごとの特徴

上場基準を満たすためには効率的なオペレーション構築やそのための組織構築を行う必要が出てきます。チェック機能によって不正を防止できる体制を整え、経営の透明性を確保する準備が始まるのです。ここで、監査役の採用を検討し始めます。

しかし、創業からひた走ってきた少数精鋭のメンバーは阿吽の呼吸で事業を進めており、チェック機能がなくても大きな不正は起こりにくいため、管理体制を整えることは後回しにされがちです。このような状況下で採用される監査役の任務は、難易度がかなり高いと言えます。

【Aさんのエピソード】

大企業であれば印章管理規程等によって当たり前のように厳重に管理されているはずの社印。Aさんはこれが管理部長の机の上に転がっていて誰でも押せる状態になっているのを発見。

社印を施錠できる場所に保管することや、社印を押した書類を一覧化する管理簿の作成を提案したところ、「これまで問題は起きていない。ルールでがんじがらめにするのは企業の成長を鈍らせるだけ」と、当初は社内の納得を得られなかったそうです。しかし、社印の持つ意味や、きちんと管理せずにいつの間にか重要な契約書に社印が押されていたらどんなリスクが起こり得るのかといった目的や理由を説明し、 最適な管理と運用を一緒に考えて行ったそうです。

内部統制がなぜ必要なのか、メンバー一人ひとりが自分ごととして理解してもらうための啓発活動に今も地道に取り組んでいるAさん。「やることがいっぱいあって腕が鳴ります!」と仰っていました。

監査役の役割③:企業独自の経営管理の仕組みづくり、運営支援

企業の特性やプロセスに応じた組織や規程を整備するには、事業や企業風土、業務プロセスへの深い理解が求められます。そのためには重要会議への出席や、経営者、取締役、各部門長等との1on1を重 ね、企業・事業への理解を深めた上でリスクを抽出し、具体的な解決策を提示します。

・何かあったときに、それを牽制するための規程はあったのか?
・規程は絵に描いた餅ではなくきちんと運用されていたのか?
・運用をチェックする体制はあったのか?
が問われた時に根拠を持って説明できるよう、管理面の整備を支援します。

組織は主にCFOをはじめとする管理部門が、規程類は弁護士や社労士等が作成しますが、社内でのカスタマイズや運用について、監査役は役員、現場、社外の専門家と連携しながら支援して行きます。

【Bさんのエピソード】

「常勤監査役」という重厚な肩書とは対照的に、明るく人懐っこいキャラクターのBさん。参画早々、経営会議でこれまでに把握したリスクとその対応策の発表を求められました。発表すると、CEOから各部門長に「Bさんの話を重く受け留めてください」と発言があり、各部門長は迅速に各部内で対応策に着手したとのこと。

Bさんは謙遜されていましたが、専門家が提言するからこその重みと、信頼されるキャラクターで皆が納得する説明ができてこその迅速な動きなのだと思います。と同時に、CEOもBさんのキャラクターと役割を上手に活用して連携されていると感じました。

常勤監査役のやりがいと難しさ~常勤監査役は子育てに似ている ~

やりがいと難しさは常に隣り合わせのようです。

「監査役はやりがいがあるが、責任も重大。粉飾決算や違法行為を放置したり、発見できなかった場合の損害賠償責任を負っていることも、常に念頭に置いて職務にあたっている」


⇒役員賠償責任保険や定款への責任減免条項の設定といった事前の対策もありますが、勤務時間の長短とは関係なく重い責任を負う職務であることは覚悟する必要があります。

「監査役としてやるべきことは決められているが、スタンスややり方は自分で考えて実行できる。そこに責任と面白さがある」

⇒自分の立ち位置やスタンスを客観的に確認するために自社外の監査役との情報交換も大事にしているそうです。

「社内で監査役の仕事を理解してる人は少ないし、同じ立場の人はいないので孤独を感じることはある」
「手を動かしてくれることを期待されることがあるが、業務執行側ではないというスタンスを理解してもらうのが難しいと感じることもある」


⇒代わりにやってあげることはできないが成長のために助言し、見守ると言うスタンスは、「子育てに似ているかも!」と皆さん仰っていました。

働き方:時短勤務も可能だが、年単位での確認が必要

Aさん、Bさん、Cさんは現在、以下のように勤務されています。

3人の働き方

ここで注意すべきこととして、勤務条件を決定するにはIPOまでの期間や、 主幹事証券会社・監査法人の方針を確認する必要があることです。

直前々期には週3~4日の勤務で良いとしても、直前期には週5日の勤務が求められる場合があります。そして、この5日勤務についても、出社を必須とする場合と、リモート勤務との併用を可とする場合、週3~4日勤務でも連絡が随時取れるならばOKなど、方針は異なるようです。
4年の任期の中で、IPOに伴う繁忙期がいつになるかを年単位で見通しを立てる必要があります。

また、勤務時間については裁量のある働き方ができますが、責務の大きい監査役は何よりも業務を優先しなければならない時もあります。
Cさんは、月に1度の取締役会や重要な会議の際は、両親の予定や病児保育での預け先確保等をし、何があっても必ず出勤できるようにバックアップ体制を複数整えているとのことでした。

参画前の確認ポイント「信頼関係が築ける経営陣かどうか」

まずはママテラスが提供する情報の他、企業HPや経営者インタビュー等の関連記事等、ネット等から事前に入手できる情報に一通り目を通しましょう。その上で、面談を通して気になることは納得の行くまで確認し、参画の決断をして頂きたいと思います。

【面談時に確認すべきポイント】

1.代表をはじめとした経営陣に共感できるか
  -IPOはどんな目的で 、なぜ 目指しているのか
  -耳の痛い話にも向き合い、充分に話し合いをできる間柄になれそうか
2.応援したい事業内容か
3.想定している上場時期、IPO準備状況
4.現在の組織体制、重要会議体の開催状況
5.内部監査室の構築状況
6.自身に期待される役割
7.働き方(参画当初~IPO前後の見通しまで)

3、4、5 の状況によって求められる役割や負荷がある程度決まりますので、丹念に確認することをお勧めします。

Aさん、Bさんは複数企業の経営者と面談を重ねて決断されました。
特に2度目の監査役としての転職だったBさんは「お互いの意見を尊重し合え、必要な時は納得するまでとことん話ができるような信頼関係が築けるかどうかを重視したい」と仰っていたのが印象的でした。

監査役経験後のキャリア

ママテラスは2017年にサービスをスタートしており、任期を終えて次のキャリアに移った具体的な事例をご紹介できないのですが、Aさん、Bさん、Cさんは 共通して「監査法人に戻った人は知らない」と仰っていました。

・監査役を勤めた後に、その会社の役員、顧問として関与を継続する
・他社の役員、顧問に転職する
・CFOとして他社に転職等のようです。スタートアップの可能性や魅力を実感し、フルタイムで参画できる方は「今度はもっと手を動かしたい!」と新天地を求める方もいるようです。

監査役として参画したい方がママテラスを利用するメリット

監査役の方々とお話していると、事業会社へのキャリアチェンジに際しては、監査法人時代の先輩・後輩を中心とした知り合いからの紹介と言ったリファラル転職が多いようです。身近な方からの紹介は安心感があるというメリットもある一方で、紹介者の期待を裏切れないというプレッシャーや義理堅い気持ちも生じるものです。

その点、転職サービスを利用すると複数の企業から比較検討でき、納得感のある決断を得やすくなります。

ママテラスを運営する株式会社アマテラスは「日本からGoogle・Facebookを100社創出する」という ビジョンを掲げ 、スタートアップの経営者と必ず面談した上でご登録頂いています。

このような企業群から、
・企業から直接スカウトを受けられる
・複数の企業を検討することができる
・ママテラス事務局に相談し、客観的なコメントを得たり、不安を解消することもできる
といったメリットを享受できるダイレクトリクルーティングサービスのご活用もぜひご検討ください。

  • 転職コラム
  • 公認会計士の方へ | 時短勤務でもできる、常勤監査役という働き方
会員登録(無料)