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INTERVIEW
インタビュー
自然電力株式会社 中澤牧子さん「ワークライフバランスの観点から会社を選び、働き方を変えました」
はじめに
今回は、太陽光・風力等自然エネルギー分野で独自の地位を確立しつつある自然電力株式会社のコーポレート部部長 中澤牧子さんへのインタビューです。
公認会計士として大手監査法人でマネジャーを務めていた中澤さんですが、ライフステージが進むにつれ、キャリアに対する考え方を見直す機会がありました。次のキャリアを模索している時に、『ママテラス』と出会い、自然電力への転職を果たしました。
中澤さんの転職活動やベンチャーで働く魅力、そして、ワークライフバランスよく働くそのスタイルに迫ります。
自然電力株式会社 コーポレート部部長 中澤牧子氏
【中澤牧子氏 略歴】
大阪大学経済経営学部卒業。公認会計士。
税理士法人在籍中、公認会計士試験に合格し、2008年より大手監査法人に在籍。
上場準備会社の監査業務、大手上場会社向けにIFRS(国際財務報告基準)導入支援業務に従事し、2014年マネジャーに昇格。2015年カナダに駐在。2016年監査法人を退社。
2017年7月自然電力株式会社入社(就業形態:フルタイム、正社員)、2018年4月より現職。
【自然電力株式会社 概要】
ミッション エネルギーから世界を変える。
事業分野 サスティナビリティ
事業内容 太陽光・風力・小水力等の自然エネルギー発電所の発電事業(IPP)、事業開発・資金調達、アセットマネジメント、個人・法人向け電力小売事業等
設立 2011年6月
社員数 約160名(2018年5月時点)
大手監査法人のマネジャーとして活躍
大学時の就職活動に違和感を覚え、「後からキャリアを選べる方法」として公認認会計士という進路を選んだという中澤さん。大学卒業後は税理士事務所で働きながら試験勉強をし、公認会計士試験に合格。その後、東京の大手監査法人に入社されました。
―監査法人でのお仕事はいかがでしたか?
「監査法人には9年程在籍しました。最初の3年は上場を目指している会社の監査を担当しました。その後、より新しいことに挑戦したいと思い、新事業として立ち上がったIFRS(国際財務報告基準)のアドバイザリー部門の社内公募に手を挙げました。
異動した部署で尊敬する上司とクライアントに恵まれ、シニア、マネジャーとキャリアを進めました。シニアの段階からクライアントへの主担当を任せて貰えたことで、社内の他部署とのネットワークを築くことも出来ました。当時は本当にハードワークで、終電帰りや土日も勉強するというのが当然と思って働いていました。
そんな時にカナダへの駐在が決まり、一年程駐在した後、退社することになりました。」
価値観の変化と退社
―退社理由を教えてください。
「家族の事情と、私自身の価値観の変化です。
夫は日本で働いている外国人で、私のカナダ駐在中は離れて暮らすかたちになりましたが、私個人のキャリアとして大事なチャンスだということを頭では理解しつつ、心情的には理解しづらいようでした。欧米では単身赴任よりも、家族は一緒に暮らす選択の方が一般的で、「会社の業務として駐在しているのだから、定期的に家族と会うための休暇や航空券は会社が準備すべき。なぜ交渉しないの?」と言われました。
当初は夫の主張がピンと来ていなかったのですが、私自身も日本を離れてみて、母国以外で暮らすことの大変さを理解し、また、カナダで一緒に働く同僚が、仕事よりも家族や自分の生活を大事にしているのをみて、私の中に「短期的にも長期的にもワークライフバランスは大事かも」という価値観が芽生えてきたのです。「短期的なワークライフバランス」というのは日々遅くまで働かないということで、「長期的なワークライフバランス」というのはライフイベントに応じたキャリアチェンジという意味です。
そんな中、夫から母国に戻ることを検討したいという話もあり、私は駐在期限前でしたが、一旦日本に帰る決断をしました。しかし、これは会社の意向と異なったため、結局退社することとなりました。」
当初ネガティブだった転職活動
―2016年8月に退社され、転職活動を始めたのは翌年2017年の春頃でしたね。
「夫は、キャリアが少し変わったこともあり、当面日本で働くことになりました。
ただ、私は次の就職に前向きな気持ちになれずにいました。本当の意味で、ワークライフバランス(短期も長期も)を考えている会社なんて日本にはないという思い込みと、仮にワークライフバランスを重視するような働き方をしても、監査法人時代に描いていたキャリアには届かない、と思い込んでしまっていて、「無理に働かなくてもいいかな」と思っていました。
そんな折、知人から『ママテラス』を教えられました。サイトをみたところ、様々な事情等でフルタイムでは働けない方向けの人材紹介サービスだということでした。
私はフルタイム勤務が可能でしたが、「本気でワークライフバランス(短期も長期も)を真面目に検討してくれる転職コンサルなら、ママテラスにお願いしてみてもいいかな」と思ったのが、ママテラスでの転職のきっかけです。」
自身の価値観の変化や転職活動について振り返る中澤さん
「長期間は働けません」――ワークライフバランスが可能な企業に絞る
―転職先を選ぶにあたって重視したことを教えて下さい。
「転職先を選ぶにあたり、3つ軸を考えていました。
1つは、過去の経験が生かせること。私の場合、会計、財務、税務の経験を活かすこと。
2つ目は、英語力を向上させたいので、仕事で英語に触れられること。
そして、3つ目が、ポジションなり、業界なりで何か新しい挑戦があることでした。
これらに加え、将来、夫が日本を離れるキャリアを選択する可能性もあるので、10年、20年働けると約束できないという状況がありました。そのため「数年間の勤務になる可能性がある」と伝え、それを受け入れられる企業に絞りました。
そうして絞り込み、実際に受けたのは十社もなかったと思います。」
―最終的に自然電力に決めた理由を教えて下さい。
「オファーを頂いた中には、『週3日出勤でOK』というポジションもあったのですが、今後のキャリアのことも考えて、最後は上場企業子会社のCFOか、自然電力の経理マネジャーかで悩みました。
最終的に、自然電力は面接の段階から、上司から部下になる方まで皆と会うことが出来、しかも皆「一緒に仕事をしたい」と思える方達だったのが決め手となりました。」
転職活動では「エージェントや知人への相談をお勧めします」
―これから転職活動をする方へお勧めする活動等があれば、教えて下さい。
「幅広く、かつ、効率的にという点では、気の合うエージェントを選んで活用することをお勧めします。エージェントをきちんと選べば、自分に合いそうな案件を、自分で探すよりも幅広く提案頂けます。
その反対に、自分達のエージェントフィー本位で、個人の意向とは異なる企業を紹介してくるようなエージェントとは連絡を絶ちました。
そして、今まで一緒に働いた人に相談してみることをお勧めします。
仕事の中で自分のことをよく知ってくれているので、自分に合う案件を紹介してもらえていたと感じます。既に退社を決めて転職活動をしている場合は、オープンに知人等に話した方がいいと思います。」
女性の場合、そのライフスタイルや価値観が多様なこともあり、周囲に相談できない方も多いようです。しかし、自分だけで考えていると、考えが行き詰まり、挫折してしまうことも…。気の合うエージェントや仕事の話が出来る友人等の周囲を巻き込むことも転職活動のコツのようです。
コーポレート部長昇進し、拡大する組織を支える業務改善を推進
2017年7月に経理マネジャーとして入社した中澤さんは、2018年4月にはコーポレート部部長に昇進なさいました。
―現在のお仕事について教えて下さい。
「経理としての通常業務に加えて、短期間で社員が増えている状況で、「サポート部門の人を増やさずにコントロールしていく方法はないか」という業務改善にも積極的に取り組んでいます。
2018年4月から法務、総務も含めて三部門の担当となったのは、サポート部門全体を効率よく回せるように考えてやって行くように、ということだと思っています。」
―入社から1年以内での部長昇進ですが、認められた要因はどんなところにあると思いますか?
「1つは、私の分野の専門性が丁度求められていて、かつ不足している状況があったかと思います。必要な人材が入ったので、在籍期間に拘わらず、責任者にしようという会社の考えは柔軟だと感じます。
もう1つ、私が新しいものを吹き込んだとしたら、「ルールがないことが、自由を阻害することもある」ということを主張してきたことです。
現在当社は約160名の組織となり、創業の頃とは異なります。「仕組やルール、規程等を入れていかないと既存業務が効率化されずに手元が詰まってしまい、結果として新しい挑戦をすることが難しくなる」と主張していて、それが経営層にいくらか納得して貰えたのだと思います。
今回の役割変更は会社が次のステージを目指すにあたって、より強くコミットしてほしい、という意図だと理解しています。」
―参画して間もない組織で、様々な進言をするのは凄いですね。
「「変えた方がよい」と思うことは、きちんと伝えた方がいいと考えています。ただし、これまでに積み上げたものを否定する気持ちは一切なく、「その時点はそれが最善だった」ということをお伝えした上で、「今後を考えると」というお話をしています。
でも、凄いのは、色々と口うるさいことを言ったにもかかわらず、全く嫌がらずに「そうだよね」と言ってくれる経営層です。この素直さは当社のカルチャーだと思いますが、急速に成長して社員も増えた中で、そのカルチャーを組織として維持していることが凄いと思います。
当社には創業メンバーも中途入社組もいて、外国人もいて、幅広い年齢層がいます。そして、ダイバーシティーに本気で取り組んでいます。まだまだ十分でないところもありますが、より高めるためのトライをし続けているところが素晴らしいと感じます。」
人事の竹井さん(写真左)と中澤さん(写真右)。自然電力には女性マネジャーも多い
仕事の魅力は、ゴールに向け働きやすい組織、そして裁量の大きさ
―実際に自然電力で働いてみて、ここで働く面白さ、魅力はどんなことですか?
「いくつかありますが、一番いいところは、セクショナリズムが全くないところです。
これから始める、決まっていないことに対して、皆で「解決すること」が目標で、「どこの部門に押し付けるか」が目標になっていないのは、「凄い!」と感じます。とても仕事がやりやすいです。
二つ目は、裁量の大きさです。多くの決裁が私で完了するため、責任がとても大きいです。自分がきちんとやらないと会社が傾く状況にもなりかねないので、監査法人にいた時とは異なりますね。
重い裁量を持たせて貰っているので、尚更セクショナリズムの無さは助かるし、他チームと話せて決めていける面白さは大きいです。」
ワークライフバランス向上の鍵は、「自らの意識を変えること」
―お忙しそうですが、元々意図していたライフワークバランスはいかがですか?改善されていますか?
「監査法人時代よりはかなり早く帰宅しています。19時半か20時頃には退社していますし、土日は一切仕事をしないと決めています。」
-改善できた要因は何でしょう?工夫等あれば、教えて下さい。
「一番は自分の意識を変えることです。監査法人時代は「置いて行かれたくない」といった強迫観念がありましたが、「何を重視するのか」とよく考えた結果、今の私は「早く帰れる状態で仕事をしたい」ので、「それで部長として不足しているなら、降ろされることも含めて仕方がない」というように考え方を変えました。
今後は、望む人が望む働き方ができる組織を、率先して作っていきたいと考えています。」
ベンチャーには何もない。「なら、作ればいい!」
-中澤さんは大手ファームから現職に移られましたが、大きな組織からベンチャーに転職するにあたり、覚悟すべきギャップや違い等はありますか?
「大企業と比べると、「ルールや自分の役割の定義がない」と感じるかも知れません。「ない」というより急速な成長の中で作る時間もなかったというのが実情だと思います。
それに対して、「何でないのですか?」という質問ではなく、自分で変えていこうとする意識が必要だと思います。とはいえ、気づいた人が全部やると大変なので、周囲を巻き込みつつやっていく。背負い過ぎなくてもいいけど、見ないふりもしないことが大事です。」
一時的な年収ダウンと引き換えに得るもの
-収入的にはいかがですか?プロフェッショナルファームは平均的に年収が高いこともあり、転職時にはギャップがあったかと思います。
「前職に比べ、入社時は一時的に下がりました。今は戻っています。」
-ベンチャー企業では、特に入社時の年収を抑える傾向があります。大企業からの転職組にはすぐに機能する方と、時間が掛かる方とがあり、まずは給与を抑えて様子を見ようとする企業が多いようです。
しかし、プロフェッショナルファーム等で高年収を得ていた層には、この年収ダウンがネックとなってベンチャーに踏み切れない方もいるようです。
「大事なことは、その後に描くキャリアプラン、つまり「この会社で何を得たいのか」ということ次第だと思っています。年収が欲しいのであれば、プロフェッショナルファームにいればいい。「そこでは得られないものが欲しい」以上、新しく学ぶものがある以上、一旦年収を落とすことも決してマイナスではないと思います。」
自然電力オフィス。社員数が150名を超え、スペースが拡張された
自動化で組織が大変革する時代、判断力や人脈が生存条件になる
-最後に、ベンチャー転職を検討している方へのアドバイスをお願いします。
「サポート業務に着目すると、業務自動化が1年以内にスタートすることを織り込む方がよいと思います。大手企業でも自動化は進みます。そうすると、必要な人材はかなり少なくなると思います。
そして、長期的には組織の形態にも変化が起きると考えています。会社の形態をとらず、何かをやりたい人がいて、その場に各分野の人材が集まり、数年働き、ミッションが完遂したら解散して次、みたいな形が増えていくと思います。
そんな時代に、その場に呼んで貰うにはネットワークと個性が必要です。
業務が自動化したら、残るのは判断業務とネットワーク、後は新しいテクノロジーを使っていく力です。それらを磨くことが、今後求められると思います。」
自身にとって大事なことを明確にし、リスクを恐れずにそれを貫く。「キャリアか、家庭か」の二択ではなく、双方の充実をさせている中澤さんの転職活動や働き方からそんなヒントを感じました。
以上
edited by 河西あすか
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