INTERVIEW

インタビュー

中島恵里奈さん「最大限に‘’任せる、頼る‘’ことで時短業務でも成果を出す!」

はじめに

今回はママテラスを通じて転職された中島恵里奈さんにお話を伺いました。
経費精算クラウドシステム等を提供するスタートアップのマーケティング部メディアチームのリーダーとして、時短勤務でありながら着実な成果創出を追求して働いていらっしゃいます。時短勤務のマネージャーを目指す方へのアドバイスや、大病を患って変化した価値観、スタートアップで若いメンバーと働く魅力や心がけ等について貴重なお話を伺うことができました。

【略歴】
一橋大学経済学研究科修了後、大手素材メーカー経理部を経て、広告系ベンチャーのファインドスター社に入社。経営企画室にて広告代理業務の業務フロー改革、営業支援システムの企画・開発・導入支援業務等を担当。
その後、エムスリー社にてコンサルタントとしての勤務等を経て、2020年12月に経費精算クラウドシステム等を提供するスタートアップに入社。マーケティング部メディアチームリーダーとして活躍中。

初めての転職-大手企業からスタートアップへ

ーまず、中島さんの現職に至るまでのキャリア等についてお聞きしたいと思います

中島氏:大学院修了後、大手企業の経理部門でキャリアをスタートしました。しかし、残念ながら私には合っていなかったらしく、ストレスで突発性難聴を発症するなど体調を崩すことが多くなりました。そこで、「再スタートは早い方が良い」とゼロからやり直す覚悟でスタートアップへの転職を決めました。

当時社員30名程だったファインドスター社に経営企画部門で採用されたのですが、経営企画に限らず会社の仕組化やIT化、業務支援システムの企画から制作など本当に様々な業務経験を積むことができました。特に業務フローの見直しやIT化などは最初から最後まで一貫して取り組むことができ、このときの経験は現在でも生きていると感じます。

また、私が入社した頃はちょうど組織の再編成に取り組み始めていたタイミングで、会社のミッション、ビジョン、バリューを改めて会社に浸透させようとしている時期でした。耳あたりの良い言葉を並べて会社が建て直せるのかという疑問も多少あったのですが、結果的にはビジョンが浸透すると共に業績も伸び、仲間がどんどん増えていく貴重な過程を経験できました。

エムスリー社への転職、起業チャレンジ、そして新たな環境へ

中島氏:ファインドスター社では人にも恵まれ仕事も順調だったのですが、その一方で自分自身にまだまだ足りない部分も見えて来ました。もう一段階成長するためには新たな環境に身を置いた方が良いと考え、エムスリー社への転職を決めました。

エムスリー社では、自分の仕事のやり方に一番の影響を与えてくれた上司との出会いがありました。マッキンゼーから来た方だったのでマネジメントも仕事の流儀もマッキンゼー流で、リクルートの流れを汲むファインドスター社とは社風も全く違いカルチャーショックを受けたこともありました。製薬会社のマーケティング部と対峙する最前線での業務ということもあり、求められるプロフェッショナルとしての態度や仕事の質もこれまでとは全く違ったため、ハードワークではありましたが、多くのスキルを身に付けることができました。

その後、諸事情で業務が過負荷になってしまったことや、コンサルとして働くのではなく、自分の手で事業の立ち上げと成長にチャレンジしたいという思いから、再びファインドスター社に戻りました。既存事業の分社化に取り組み、ゼロからの会社の立ち上げ、若い社員のマネジメント、営業にマーケティング、管理部門の構築とあらゆる経験を積むことができ、刺激溢れる面白さに日々没頭していました。

大腸癌の発覚により、仕事に対する価値観が大きく変化する

中島氏:無事に分社化が完了したタイミングで、私自身もまた新たなステージにチャレンジすることにしました。自分の興味と強みを生かしやすいマーケティングができる会社や、これまでの業務で得た知見で優位に働ける業界を中心に探し、転職先ではWebマーケティングや事業企画などに携わることができました。

ところが、その矢先に健康診断の精密検査で大腸癌が見つかりました。内視鏡で切除して終わりと軽く考えていたのですが、検査で進行癌であることが分かりました。心が折れそうになりましたが、実は2週間少々で復職しました。主治医にも呆れられましたが、仕事をするストレスよりも、仕事をせずに社会から孤立していくストレスの方が私にとっては大きかったので、それなら早めに仕事に復帰して、心身のバランスを取りながら体調の回復にも努めていった方が良いと考えたのです。

ー大きな病気を経験されたことで、ご自身の中で価値観はどのように変化されましたか?

中島氏:病気をしたことは、私の中で大きなターニングポイントになりました。
以前の私は我ながら推進力もパワーもあり、何より仕事が好きだったので、仕事に全力投球して成果を出していくことが幸せだと思っていました。
しかし、病気を経て弱者の立場に立ち、初めて「仕事とは癌に罹患する前の私のような人間のためだけに存在しているのではない」と気が付きました。生きる手段としての仕事、生きた証を残すための仕事、そういう向き合い方をされている方々の存在を知り、自分が狭い価値観や視野の中で仕事というものを捉えていたことを恥ずかしく感じたことを覚えています。

時短勤務でもキャリアを断絶させたくない!ママテラスに登録

ー術後1年半が経過した頃に妊娠、出産をされたそうですね。妊娠中のお仕事の状況、育休後の職場復帰などについてお聞かせいただけますか?

中島氏:妊娠中はつわりが酷く、かつてのようなパフォーマンスを出すことは困難な状況でしたが、上層部からの理解は感じられず、今後への不安を抱きながら産休に入りました。

産休・育休明けに復職しましたが、異動した部署はこれまでの経験を発揮できるようなところではなく、会社のサポート体制の不備を感じることも多くなりました。同僚が幾人も辞めて行き、「そろそろ私も潮時か」と思うようになりました。

そこで、育児にも納得できる形で向き合いたいけれどキャリアを断絶させたくない、そして、これまでの経験を生かしてもっと生き生き自分らしく働きたいという願いを実現できる職場があればと、情報収集も兼ねてワーキングマザー向けサービスであるママテラスに登録することにしました。

ママテラス経由で転職を実現

ー育児をしながらの転職活動となりましたが、どんなことを重視されていましたか?

中島氏:一時的にキャリアの糸が細くなっても途切れさせることなく、将来再びアクセルを踏もうと思ったときに不足のない経験を重ねたいと思っていました。また、信頼する友人から「あなたは自分を過小評価している。経験を積んで来たことにもっと自信を持って、”自分のため、生活のため”ではなく”社会に還元していく働き方”を意識するべきだ」と言われ、そのような働き方ができる環境を選びたいと考えるようになりました。

そこで、新たな転職先は「これまで身に付けてきたスキルや業務経験を活かせる職場」、「自分が休んでも業務が滞らない、チームで仕事ができる職場」、「若い人が一定数以上いる環境」の3つを軸に探すことに決めました。

ー最終的に、弊社経由で現職への転職を決められたわけですが、決め手はどんなところだったのでしょうか。

中島氏:これまでの経験が活かせる職場だったことが大きいですが、Co-workという入社前に一定期間働ける制度があり、その際にボードメンバーはもちろん、マーケティング部のメンバーをはじめとした社員の優秀さや仕事への真面目な向き合い方に感銘を受けたことや、会社のビジョンやサービスのコンセプトを非常に気に入ったことなども決め手となり、入社を決意しました。

会社のビジョンの重要性についてはファインドスター時代のお話もしましたが、現在の職場でもチームで議論をして浸透を図ったり、毎月の1on1等でもビジョンに沿った行動ができているかという観点で話したりすることが多く、入社後も「ビジョンだけ素晴らしいが社員に共感されていないスタートアップではなかった」という実感があります。

時短勤務でマーケティング部のチームリーダーを担当

ー中島さんが現在携わっていらっしゃる業務について教えてください。

中島氏:弊社はビジネス本部という本部制を敷いており、その中にマーケティング部・営業部・カスタマーサクセス部・開発部があるのですが、私はマーケティング部のメディアチームのリーダーとして働いています。リードジェネレーション(見込み顧客を獲得するための活動)が最大のミッションです。

担当業務はWebマーケティング全般で、主担当はWeb広告と一部のコンテンツ作成や数値管理、サブとしてサイトの運用や改修、オウンドメディアの運用サポートを行っています。マーケティングにどっぷり浸かれる喜びがありますし、Web広告はタスクもはっきりしていて、時短勤務でも取り組みやすい領域だと感じています。

ー実際に働いてみて、ご転職先の魅力や面白さはどこにあると感じますか?

中島氏:まず、多様なバックグラウンドを持った社員が多いことで思いも寄らぬ刺激をもらえることがあります。また、若く熱い思いを持った社員が多いこともあり経営スピードの速さには目を見張るものがありますし、急成長中の会社ならではの面白さを日々感じているところです。
また、非常に魅力的なコンセプトに基づいたサービスが日々開発・改善されています。私自身が経理部の担当者だったとしても「ぜひ使ってみたい!」と思えるサービスですし、友人知人にも自信をもっておすすめできるサービスです。このように心から思えるサービスのマーケティングを担当できることが本当に幸せなことだと思いながら日々仕事に向き合っています。

若い社員とはお互いにリスペクトを持って受け入れるのが正解

ー転職活動時に「若い人が一定数以上いる環境」を希望されていましたが、若い社員とのコミュニケーションはいかがですか?

中島氏:ジェネレーションギャップは少し不安でしたが、今のところ何とか対応できている気がします。周りの優秀な理解ある同僚のおかげだと思っています。「世代間で考え方の違いは当然あるよね」という前提理解のもと、お互いに敬意を持って受け入れるのが正解だと感じています。

以前の職場で活躍されていた40~50代の先輩社員の共通点を思い出すと、年下に対してもリスペクトがあり自分のやり方に固執しない一方で、自分の仕事には強い誇りを持っている方が多く、また経験資産を惜しげなく還元する姿勢がとても良いなと思っていました。今は自分がその立場になることも多くなりましたので、若い社員にはそのように接して行きたいと考えています。かつて友人に言われた「社会に還元していく働き方」というのは、こういうことも含まれるのかもしれません。

「任せる、頼る」-自分のリーダーシップのあり方を確立するのが大切

ー現在の勤務時間を教えて下さい。

中島氏:今も時短勤務で、9時半から16時半の契約になっています。キリが良いところまで仕事をしてから子供を迎えに行っていますが、勤務時間が大幅にオーバーすることはほぼありません。夫も週に2回程度は迎えに行ってくれるので、無理なく働けています。

ー時短でありながらリーダーとして働いていらっしゃるワーキングマザーはまだ多くありませんが、どんなことを心がけながらお仕事をなさっていますか?

中島氏:「チームをぐいぐい引っ張る統率力、何事も自分で決める決断力、いざとなったら自分が出て行く行動力」といった従来型のリーダー像に縛られず、「任せる、頼る」を素直にやろうと思っています。むしろやらないと仕事もプライベートも破綻してしまう可能性があると思います。そして部下が悩んでいるときは一緒に悩み、相談したいときは相談に乗り、立場や職歴の長さに関係なく、できる可能性が高い人に適切に仕事を振り分けることを心がけています。
こういう「自分なりのリーダーシップのあり方」を確立することは大切だと考えていますし、幸いメンバーは皆優秀なので、安心して任せることができています。普段から「若い人は人類の進化形だ」と思っており、私の方が学ばせてもらうことも多いです。

自分の仕事への取り組み方については、時短勤務の中で成果を出すために、今の自分が仕事に投下できる時間には制約があることをしっかりと自覚し、時間を要する仕事の主担当からは手を引くことにしています。逆に、時間の制約がある中でも工夫次第で成果を出せる仕事には集中してチャレンジしたいと考えています。

入社後3か月で直属の上司が退職し、苦しい時期が続く

ー一方で、転職されて想定外の大変なこともあったのではないでしょうか。

中島氏:一番想定外だったのは、入社後3か月で直属の上司が退職してしまったことです。それまでは広告運用やコンテンツ制作を中心とした業務に集中できており順調だったのですが、その上司の業務を一部引き継ぐことになったことで、業務時間と業務量のバランスが取れなくなってしまいました。

早めに引継ぎ資料を作成してもらったり、対外的な挨拶をしておいてもらう等、引継ぎとして在職中にもっとお願いするべきだったことが不充分でそちらに手を取られ、それまでやっていた業務にまで影響が出てしまったことも悔しかったですし、若いメンバーに「ちゃんとした引き継ぎ方」を見せられなかったという後悔にも苛まれました。パフォーマンスが落ちたことについて周囲からは「頑張っているけれど空回りしている」と厳しい指摘を受けたりして、しばらく苦しい期間がありました。

会社と共に課題を客観的に整理し、解決への道筋をつける

ー大変な状況の中、どのように解決に向けて行動されたのでしょうか?

中島氏:まずは代表や役員に対して「やらなければいけないことの絵はあるが、リソースが足りないために十分な対応ができない」という状況をありのままに相談し、自分が解決するべき問題と会社が解決しなければならない課題を整理しました。結果的には、私の勤務時間を延ばすことで対処するのではなく、手数が必要な業務はインターン生や外部に委託する体制を整えるという形で解決を図っていただけることになりました。

私自身は、コントロールしやすい業務は確実にコントロール可能な状態を維持することを意識し、同時にそれ以外の業務も絶対に止めないという覚悟で必死に取り組みました。またその一方で、うまく行かない時も必要以上に引きずったり落ち込んだりしないように努めました。プライベートに悪影響が出ることは避けたかったですし、過去の経験から「困難な局面でも折れずに粛々と対応してくれる、安定感抜群の人の価値」はよく理解していたので、自らもそういう存在でありたいと常に考え対応するように心がけていました。

後になって振り返ってみると確かに大変な経験ではありましたが、仕事のやり方を見直す良いタイミングでもあった気がします。困難な状況だからこそみんなで頑張らなくてはと、声を掛け合い力を合わせたことで無事に乗り切れたのだと皆に感謝しています。

転職活動は「自分がどうしても譲れないもの」を大切に!

ー最後になりますが、これからスタートアップ転職や時短転職をする方にアドバイスをお願いできますか?

中島氏:スタートアップ転職には向き不向きがあると思います。不確定なことや変化を楽しめる方には、スタートアップは本当にお勧めです。逆に変化を好まず、不測の事態に狼狽してしまうようなタイプの方はスタートアップに拘る必要はないように思います。私自身もスタートアップに転職する際は大企業の方とスタートアップの方どちらにも相談し、じっくりと検討しました。

家庭の事情等で時短など働き方に制約が出てしまう場合には、「自分がどうしても譲れないもの」を最初に決めて、そこを判断の基準にしていくと良いと思います。私自身は、将来、子供が私の姿を見て「働くって楽しいことなんだろうな」と感じ取ってもらえると嬉しいなと思っています。また、これから出産・子育てというライフステージの変化を迎える後輩が、キャリアか子育てかの二択ではなく、自分のありたい姿を模索しながら仕事、子育て両方にチャレンジできるんだ、と思ってもらえると嬉しいです。
ですので、「子供が寝てからバリバリ仕事します」や「仕事は諦めて子育てに集中します」という極端なことはせず、今のペースをベースに自分自身の「在りたい姿」の実現にチャレンジしていきたいです。

ー時短勤務という条件でマネージャーとして転職できる方はまだまだ少なく、今回は大変貴重なお話が伺えました。
中島さんのこれからの益々のご活躍を楽しみにしております。本日はありがとうございました。


※ 中島様はインタビュー後(ご入社から1年半程経過時)にフルタイム勤務へ変更されました。
「私自身の希望ももちろんありましたが、子供が保育園が大好きで一番仲良しのお友達が一緒に延長保育になる、という状況に後押しされたのが一番大きなきっかけのように思っています。」との言葉が印象的でした。

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