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スタートアップ×時短転職 で給与はどうなる⁉

時短勤務等の柔軟な働き方をしながら、成長性のあるスタートアップ企業のコアポジションで活躍できることがスタートアップ×時短転職の魅力ですが、その給与事情はどうでしょうか?

今回はスタートアップ企業の給与事情や時短勤務となった場合の給与事情、そして転職時の給与交渉のポイントについて、お伝えしたいと思います。

スタートアップ企業の給与水準は大企業の7~8割程

最近は資金調達が順調に進んでいることから上昇傾向にあるスタートアップ企業の給与ですが、一般的には大企業の給与水準の7~8割程度となります。
※企業フェーズにより異なります。スタートアップの中でも、創業期は低め、IPO前後だと比較的高めといった傾向があります。

また、他には
‐フルタイムの場合、給与には40時間/月程度の残業代(みなし残業制度)が含まれていることが多い。
‐ボーナスやインセンティブは業績次第なので、支給されないことも多々ある。
‐特に、スタートアップ未経験者の入社時給与について、低く抑えられる傾向がある。
‐ストック・オプション(自社株購入権)が企業フェーズや職位によって、付与される場合がある。
といった特徴があります。

上場や事業売却によってストック・オプションが資産化したという話もありますが、誰にでも起こることではなく、弊社では「ストック・オプション目当ての転職は止めた方がいい」と転職者にお伝えしています。
このような状況ですので、転職で高額給与を目指す方にとっては、スタートアップ転職は魅力的ではないかも知れません。

スタートアップ企業の給与水準のわけ

スタートアップ企業への転職時、現職より下がった給与提示に「自分への評価が低いのか」と思われる方もいらっしゃいますが、必ずしもそうではありません。

以下3つのような理由があります。
理由1:企業として収益化途上、つまり、まだ利益が出ていない状況の為、厚遇できない。

スタートアップ企業は新しい事業領域に挑戦し、その収益化を目指している途上です。このため、既に収益が出ている大企業等に比べると、給与を低めに抑えざるを得ない状況です。

理由2:ベンチャー・キャピタル等から投資を受けている状況であり、社員の待遇向上より、成長投資が優先される。

収益途上であるスタートアップ企業の資金調達は、借入等ではなく、エンジェルと言われる個人投資家やベンチャー・キャピタル等の投資からその殆どを得ています。個人投資家やベンチャー・キャピタルは投資の見返りに企業株を入手し、その株が大きな価値を持つよう、収益化に向けたサポートを行います。
そういった投資家の関与が強いスタートアップ企業では、更なる成長に向けた投資が優先される事情があります。

理由3:(入社時給与が低く抑えられることについて)大企業とスタートアップでは仕事の進め方に大きな違いがあり、スタートアップで成果を出せるかは未知数。

特に入社時給与を低めに抑えることが多いですが、大企業とスタートアップ企業とで仕事の環境や進め方が大きく異なることに起因しています。

スタートアップは大企業のような資金力も知名度・ブランド力もなく、マンパワーも限られているため、仕事の進め方が大企業とは大きく異なります。知名度やブランド力のない中で営業を行い、様々な仕組みや確立した手順がない中で業務推進をすることとなるからです。
このため、大企業で成果をあげてきた方でも、スタートアップ企業での成果創出は難しいことが多く、成果創出が未知数な入社時には給与が低めに抑えられることが多いのです。

時短勤務の給与は、〔時短勤務時間〕/〔フルタイム勤務時間〕で算出

時短勤務で働く場合、以下のような式で給与が計算されることが多いです。
転職先企業の同ポジションのフルタイム給与 ×(希望就労時間 /フルタイム所定勤務時間)

まず、 「転職先企業の同ポジションのフルタイム給与」ですが、これは職責の大きさや企業のフェーズによって異なります。
職責の大きさでいえば、アシスタントとマネージャークラスではその時間単価が異なります。また、企業フェーズでいうと、投資家から成長資金を得ているIPO前企業よりは、上場企業の方が高い給与を出しやすい環境にあります。

そして、 「フルタイム所定勤務時間」ですが、これは「定時時間」だけではなく、40時間/月程度の「みなし残業」を加算して考えるべきかと思います。
殆どのスタートアップ企業では、管理の手間を省く等の為に「みなし残業」を導入しています。これは残業実績に関わらず一定時間の残業が行われたとみなし、残業代を含めた給与支払いとすることです。

すると、9‐18時勤務のフルタイムの所定勤務時間は8時間×20日+40時間のみなし残業時間=200時間 に対して、
9‐17時定時勤務、残業なしを希望した場合:(7時間×20日)÷200時間=7割
9‐16時勤務を希望した場合:(6時間×20日)÷200時間=6割
となります。
つまり、フルタイム給与が500万円/年の場合、9‐17時定時勤務(残業なし)では350万円程、9‐16時勤務では、300万円程となります。

時短勤務は、確かにワークライフバランスにはよいのですが、給与にも大きく響きます。そこを理解し、自らの優先順位を明確にした上でご選択頂くとよいかと思います。

スタートアップ×時短転職のオファー金額に当惑⁈

前述のような状況から、スタートアップ×時短転職をする場合、フルタイム勤務だった前職から半減することは珍しくありません。
そのためスタートアップ企業から時短勤務として内定通知書を貰ったものの、前職からのダウン幅に困惑し、「もう少し上げられないか?」とご相談頂くことが多いです。

しかし、給与をあげるには、
‐勤務時間を長くする
‐時間当たり単価を高める
のいずれの方策しかありません。

9-17時勤務可能ならば、フルタイム勤務は可能か?

時短勤務による減額の大きさから、勤務時間の延長を検討する方や「殆ど残業しなくてよいと聞いたので」とフルタイムのポジションに転じる方もいらっしゃいます。

しかし、そうしてフルタイムポジションに転職された方が3か月程して、「やはり無理でした」と再び転職相談にいらっしゃることがままあります。
フルタイム勤務では業務命令があれば応じる義務がありますし、周囲が当然のように残業する環境で同じ処遇でもある自分だけが残業なしで退社することは難しく、結果的に希望していた働き方が実現されないことが多いようです。

時短勤務では残業命令から免れますので、給与に反映させて上で時短勤務をするということは、残業をしない権利を得ることだとも思います。
「給与か、時間か」今のご自身に必要なものを明確にし、それが守られる就労形態にすることが肝要だと思います。

入社時給与よりも、評価面談や昇給機会の設定が重要

もう1つの方策は、時間当たり単価を上げることです。

企業から出た内定通知書は、弊社でも「希望条件に合っているか」、「給与水準は妥当か?」等を確認しています。給与については、勤務時間で割った〔時間当たり単価〕を算出し、期待されている仕事やポジションに対して妥当かを確認しています。
そうして算出してみると、そのポジションの相場に当てはまるものの、やや低めに設定されている場合が多くあります。どうして「やや低め」かというと、前述したように入社前では成果創出が未知数だからです。

入社時の年収交渉は勿論可能ですが、仕事をする前から「成果を出せます」とは言い切れないので難しさがあります。また、仮に給与アップできたとしても、それは入社時から即パフォーマンスすることを約束することになり、自らハードルを上げることとなります。

このような状況から、入社時給与額の交渉よりも、入社後の評価時期や評価を上げる為のポイントについて確認しておくことを弊社ではおすすめしています。具体的には、「一旦はこの年収だが、3か月後(または6カ月後)に双方話し合いの上、見直しを行う」といった内容をオファーレターに入れることをおすすめしています。

会社の成長や成果が認められれば、評価や給与に反映

スタートアップ×時短転職の給与水準について厳し目に現状をお伝えしましたが、スタートアップの良さとして、事業が成長し、そこへの貢献が認められれば給与等の待遇が見直されるという点があります。

未開拓分野の収益化に取り組んでいるのがスタートアップですので、取り組んでいる事業が拡大し、収益化すれば、社員の待遇等も大きく変わってくる可能性があります。
また、少人数でシンプルな組織であるスタートアップでは、各自の貢献が見えやすいことも特徴です。入社後、その働きぶりや成果が認められれば待遇が見直される機会は大企業よりも多く、その遣り甲斐のある仕組みはスタートアップで働く大きな魅力だと思います。

実際、弊社経由で大企業からスタートアップ転職した方の殆どが入社時は年収ダウンとなりますが、その後活躍され、前職と同等か、それ以上の給与・報酬を得る方も少なくありません。
因みに、弊社入社時に前職の3割程だった私の給与も、事業が成長し、そこへの貢献が認められるにつれて見直され、現在では時給単価としては前職と遜色ない水準となりました。

入社時給与に一喜一憂せず、自らの転職目的に適う意思決定を

難しい時短勤務希望での転職活動の末に獲得したオファー(内定通知書)、その金額につい一喜一憂してしまいますが、それは入社時の給与に過ぎません。
今後数年~10年を考えた時に今回の転職で何が得られるのか?自らの転職目的は何か?といった点を踏まえた上で意思決定することをオススメします。

大手会計事務所から再生エネルギーベンチャー企業に転じたママテラス登録者の方に、入社時の年収ダウンについて伺ったところ、「年収が欲しいのであれば、プロフェッショナルファームにいればいい。そこでは得られないものが欲しい以上、新しく学ぶものがある以上、一旦年収を落とすことも決してマイナスではないと思います」と回答されました。

今後数年~10年を考えた際にビジネスマンとして大切な30~40代という時期について、「時短」を足枷にして成長や実績を諦めるのか、それとも、スタートアップで多くの意思決定経験や実績を積んだり、共感できるビジネスに参画して大きな遣り甲斐を得るのか。

目指す飛躍を得る為には年収が一時的に下がる可能性がある、という心構えを持ってスタートアップへの時短転職活動に臨まれることをオススメします。

written by 河西あすか

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