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コラム

退職事例から学ぶスタートアップ入社時のポイント&継続のコツ

「ママテラス」ではこれまでに時短勤務やフレックス等、柔軟な働き方を希望する多くの方の、スタートアップ企業への転職をサポートしてまいりました。
しかし、希望の働き方を手に入れて活き活きと活躍する方がいらっしゃる一方で、残念ながら早期の退職に至った方もいらっしゃいます。

そこで今回は、それぞれの退職要因を振り返りながら、転職活動の際に確認すべきポイントや、スタートアップ×時短勤務を続けていくためのコツについてお届けいたします。
今後転職することを検討している方のご参考となれば幸いです。

退職要因1.カルチャーギャップ:経営者や企業の価値観、環境の相違による退職

下記のグラフは、ママテラス経由で時短転職した後に退職した理由を、主に退職した個人の方に伺って集計したものです。
企業への退職理由にはホンネとタテマエがあり、必ずしも本当の理由を伝えないことも多いと思いますが、弊社ではその後のキャリアについて相談するために事情を教えて頂くことが多いため、ある程度本音を伝えて頂いています。

退職理由として最も多かったのが、「カルチャーフィットしなかった」というものでした。
カルチャーフィットとは企業文化への適応性を指す言葉ですが、「経営者」に起因するものと、「企業風土」に起因するものとに大別できます。

【1.経営者との相性、方向性の相違】

CEOとの密な連携が求められるポジションで入社したAさん。プロダクトの革新性に共感していたものの、プロダクト改善のためにはクライアントの声を聞き、時には立ち止まることが必要と考えていたAさんと、品質が万全でなくてもまずは広くクライアントを開拓することを重視したCEOとでは方向性に相違があり、Aさんは思うように事業を進められなくなる状態となり、2年目に退社。

・経営者の考えが間違っているのではなく、共感しきれないことが辛かった
・大企業であればわりきって粛々と業務を行うこともできたかもしれないが、熱量高く仕事をする楽しさも味わったので、他の場所でそれを追求したい
とAさんは仰っていました。


【2.企業風土、業務の進め方に馴染めない、変えることができない】

専門性の高い職種のBさん。求められるスキルがフィットし、希望する時間での勤務も叶い、スムーズに入社したものの、3ヶ月で退社。

・個性的なメンバーが多く、自分が当たり前と思っていたマナーや進め方と異なる面が多かった(入社時にPCが用意されていなかった、飲み会で大事なことが決まるという意思決定プロセス、エンジニア以外のメンバーはエンジニアのサポート役であるといった考えについて行けなかった等)
・業務フローが確立されておらず、業務が属人的だった
等が要因となり、退職という選択をされました。

Bさんは大手企業での勤務が長く、スタートアップの特徴とも言える尖った人材の多さや、未成熟な組織への戸惑いが大きかったようです。
選考時の面談ではCEO、採用担当者、直属上司となる方とお話されましたが、一緒に働く他のメンバーとも会っておくことで、馴染めそうな環境かどうかを判断できたかもしれません。

このようなアンマッチを更に防ぐ手段として、入社を決断する前に1日~数日程度のインターンシップを設ける企業もあります。実際の職場を見ることで面談だけでは感じきれない業務環境やメンバーとの相性を確かめることができ、求職者と企業の双方にメリットの大きいプロセスです。初めてのスタートアップへのご転職や、入社へのご不安が大きい場合には、企業に提案してみることをお勧めしています。

退職要因2.キャリアプランとの相違

中途採用はこれまでの実績・スキルを評価する採用ですが、スタートアップでは状況変動から役割や業務範囲が変化する可能性もあります。このため、「一つの専門性を突き詰めたい」等具体的なキャリアプランのある方には「不一致」となる場合があります。

大手企業やコンサルティングファームでキャリアを積まれたCさん。コンサルタントとしての経験が活きるポジションで入社したものの、組織変更により従来業務に加えてバックオフィス業務も担当することに。
緊急性の高いバックオフィス業務に対応する時間が多くなってしまい、志向しているキャリアとのギャップに悩んだ末に、2年目で退社。


採用業務のエキスパートとして入社したDさん。1年間で採用目標をしっかり達成し、社内の評価も高かったが、「採用以外の人事業務にも幅を広げたい」というDさんの希望に対して「引き続き採用で力を発揮して欲しい」という会社の意向は変わらず、2年目で離職。

「入社時は事業への共感、ビジョンの共有が大事」とはよく言われることですが、会社の状況も自身の役割も激しく変動するスタートアップにおいては、根幹となるビジョンへのコミットがないと「入社時の約束と違う」という不満だけが大きくなってしまいます。

役割や業務範囲が変更となることでキャリアの幅を広げられることはスタートアップの大きな魅力の一つですが、志向していたキャリアプランと異なっても続けるモチベーションを持てる事業や一緒に働くメンバーであるか、ということも考えておく必要があります。

退職要因3.勤務条件の問題(長時間労働)

時短勤務で入社したものの入社後しばらくして所属部門が分社化したEさん。新たな外部株主が入ってガバナンスが大きく変わり、就業環境も激変。平日の残業や休日出勤が恒常的となり、2年程で退社。

Eさんの場合、上長に何度もかけあったものの、状況は改善されず退職に至ってしまいましたが、
・時短勤務であるにもかかわらず、それを守れていない状況を数字で伝える。また、この状態が継続した場合のリスク等(例:家族から強い不満が出ている)を共有する
・業務の効率化や一部業務の外注と言った解決案を持った上で相談をする
という働きかけを行うことで、多くの場合は状況が改善されます。

役割期待や就労条件は入社前にしっかりと擦り合わせておくことが大切ですが、それでも状況によって変わることは念頭に置く必要があります。3ヶ月に1回程度すり合わせを行うことも効果的です。

退職要因4.会社都合

厳密には会社都合での退職勧奨は起きていませんが、会社の状況を慮り、自発的に退職された方はいらっしゃいます。

新規チーム立ち上げメンバーとして入社されたFさん。しかし、その後担当サービスの縮小が決定し、チームは解散することに。Fさんは一旦他部署に異動したものの、「最も期待された部分を発揮できなくなってしまったし、会社の事情も理解できるので」と自ら退社。


スタートアップの募集ポジションとして新規事業による採用は多いのですが、新規事業は必ずしも上手くいくとは限りません。企業側も成功を信じて事業及び採用を行いますので、上手く行くかを入社時に予測するのは難しいというのが正直なところです。

自身が予期しないタイミングで転職活動しなければいけない可能性など、そのリスクは理解しておく必要はあります。
しかし、事業が上手く行かなかったとしてもこの「失敗」から得られる新規事業の立ち上げや撤退といった経験の価値は大きく、次のキャリアに活かせることも多いです。

退職要因5.スキルギャップ

スタートアップの場合、時短勤務で未経験の職種に採用されることは殆どありませんが、一部は未経験領域が含まれていたり、状況変化によって未経験業務を任されたりすることがあります。

これまでの経験職種に加え、以前からチャレンジしたいと思っていた未経験の業務にメインで取り組めることが大きな決め手となり、入社したGさん。未経験分野については社内で指導を受けられたものの、時短という限られた時間内でのキャッチアップに難しさを感じていた矢先に、コロナによる在宅勤務がスタート。周囲とのコミュニケーションを充分に取ることもできず、1年以内に退職。

未経験領域については自ら調べて学び習得することが基本となりますので、誰かの指導を受けられる環境でないと心細い方や、マニュアルがある仕事の方が安心、という方には、スタートアップの環境はミスマッチとなる可能性があります。
人を育成する風土や、業務の仕組化は未整備な面が多いため、そこには期待せずに自らキャッチアップする覚悟が必要となります。

気になることは選考時に確認を

選考が進んでいる登録者の方々とお話していると、面談時に感じた小さな疑問や不安をそのままにしている方が時々いらっしゃいます。

これまでに様々な場所で人生経験を積んで来られた皆さんは、自分にとって居心地のよくない場所や、相性の良くない人を見極める力があるはずなのですが、選考時にはどうしても「早く決めたい」と言う気持ちや「こんなことを聞いては心証が悪くなるのでは」といった不安があり、確認をためらってしまうのだと思います。

入社後にも言えることですが、違和感をゼロにすることは難しいかもしれません。しかし、それを伝えることや確認することでご自身の納得感を醸成することはとても大事です。

最終面談時、CEOの第一声が「フルではないんだよね?」という言葉だったことに不安を覚えたHさん。面談後、「自分は今回の募集に適した人材ではないのでは?」という想いが頭を巡り、時短勤務という選択をしようとしている事情を含めたご自身の仕事観や、この企業でどんな形で貢献したいと考えていたのか等、面談でも伝えたことを改めて率直にメッセージされました。

企業は、その日のうちにHさんに長文を返信。時間的な貢献で覚悟をはかる意図は全くないこと、今回のポジションの募集背景や、なぜ時短勤務の方に絞った選考にしたのか、Hさんに期待する役割等、Hさんの想いや質問の一つひとつに丁寧に答える真摯なメッセージを送りました。
Hさんはその後、同社からの内定を獲得し、入社を決意されました。


選考段階から率直に意見を交わせる関係性を築いておけば、入社後の壁もきっと乗り越えやすくなるはずです。選考段階で考えや不安を伝えることは勇気の要ることではありますが、臆することなくぶつけてみて、納得の上で転職先を決定して頂けたらと願っています。

今回は退職した方にフォーカスしたため、スタートアップや時短勤務での転職に不安を覚えた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、多くの方は時間的自由度と裁量ある仕事を楽しみながら両立されています。

スタートアップ×時短転職の活動において大事にすべきことは「ママテラス」のQ&A(https://mamater.as/qa/)でもぜひご覧ください。

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